研究発表・プレスリリース

博士学生 籭(とおし)惠太らの論文が「Japan Journal of Nursing Science」に掲載されました。

博士学生 籭(とおし)惠太らの論文が「Japan Journal of Nursing Science」に掲載されました。

精神疾患、とりわけ幻覚や妄想といった症状を伴う統合失調症をもつ人は、ときに社会からの差別や偏見(スティグマ)にさらされ、社会参加を阻まれることがあります。差別的なまなざしを受け続けた結果、当事者自身がスティグマを内面化することを「セルフスティグマ」といいます。セルフスティグマは、精神疾患とともに生きる人が社会参加に向けての行動を抑制してしまうことにつながり、回復(リカバリー)の障壁となりえます。

本研究では、自分自身を大切にする「セルフコンパッション」という心理機能に着目し、統合失調症を有する精神科入院患者におけるセルフコンパッションとセルフスティグマの関連を調査しました。急性期入院時、退院時、初回外来受診時の3時点で質問紙調査により評価を行いました。セルフコンパッションの評価にはSCS(Self-Compassion Scale)、セルフスティグマはISMI(Internalized Stigma of Mental Illness)を用いました。

セルフスティグマの強さは3時点の間で変化はありませんでした。しかし精神症状の重さを調整したモデルにおいて、セルフコンパッションと対立する要素「過剰同一化」の強さがセルフスティグマの強さと有意に関連しました。

本研究の結果は、疾患の症状を自己と過剰に結びつける患者の認知に働きかけることで、セルフスティグマの軽減につながることを示唆しています。今後、入院患者に対するセルフコンパッションに着目した心理的介入の開発と検証が望まれます。

リンクより本論文の抄録および全文がご覧いただけます。
Association between self-stigma and self-compassion in patients with schizophrenia: A longitudinal study from hospital admission to first follow-up after discharge
https://doi.org/10.1111/jjns.12648