卒業研究生 山本真菜らの論文が 「International Journal of Molecular Sciences」にオンライン公開されました。
自殺は深刻かつ世界的な公衆衛生上の課題として知られています。近年、自殺行動が脳内のグリア細胞に影響を及ぼすことが明らかになりつつありますが、グリア細胞の形態変化や遺伝子の発現変動について不明な点が多い現状です。本稿では、生物学的視点から、自殺者の死後脳研究、グリア細胞における遺伝子およびタンパク質の発現変化を包括的に検討しました。
PubMed と ISI Web of Science に掲載された論文を検索し、選定基準を満たす 46 件の論文が特定されました。多くの死後脳研究では、グリア細胞の密度や数に変化はないことが明らかになりました。さらに、個々のグリア細胞に有する特異的な分子を解析し、17 のアストロサイト研究、14 のミクログリア研究、および 9 のオリゴデンドロサイトに関連する論文をそれぞれ検討しました。その結果、精神疾患(気分障害、双極性障害、大うつ病性障害、または統合失調症)を抱える自殺患者において、アストロサイトとオリゴデンドロサイトの機能低下、およびミクログリアの活性が示されました。
本研究から自殺行動と脳内の生物的機序との関連性が示唆され、分子生物学的手法、自殺念慮に対する改善薬の開発など自殺予防に向けた今後の取組みが期待されます。
リンクより本論文の抄録および全文がご覧いただけます。
Glial Markers of Suicidal Behavior in the Human Brain—A Systematic Review of Postmortem Studies 自殺行動に関わるグリア細胞の機能異常:死後脳研究に基づくシステマティックレビュー