研究発表・プレスリリース

中西三春准教授らの論文が「Discover Global Society」にオンライン公開されました。

中西三春准教授らの論文が「Discover Global Society」にオンライン公開されました。

精神疾患をもつ人における回復(リカバリー)とは、疾患や症状をもちながらも社会に一員として参加し,人生の価値を見出だせることをさします。精神科従事者にとって、患者のリカバリーを信じられること(リカバリー志向性)は重要な要素です。

とくに精神科従事者が一次医療(プライマリケア)で働くことは、精神疾患患者をいち生活者として見ること、リカバリーを信じる視点の獲得につながるとされています。家庭医・プライマリケア医の登録制度がない日本においては、身体科での勤務経験が従事者のリカバリー志向性を高める可能性があると考えられました。

本研究は、精神科従事者における身体科の勤務経験とリカバリー志向性の関係を明らかにする目的で、精神科病院・総合病院精神科に勤務する62名を対象としたウェブ調査を2022-23年(新型コロナウイルス感染症の5類移行前)に行いました。リカバリー志向性の評価はRAQ(Recovery Attitudes Questionnaire)を用い、また精神疾患へのスティグマをRIBS(Reported and Intended Behavior Scale)で評価しました。コロナ禍が実践に与えた影響について、自由記載で意見を求めました。

多変量解析の結果、身体科勤務経験がある・スティグマが強い従事者はリカバリー志向性が有意に低くなりました。自由記載のコメントでは、感染対策のため入院患者の外出や外泊ができなくなり、退院に向けた調整が困難になったことが指摘されました。

身体科勤務経験とリカバリー志向性が仮説とは逆の関係を示した背景として、コロナ禍が身体的な健康管理とリカバリー支援とのジレンマを生んだことで、身体科での勤務経験とリカバリー志向性との関係が変化した可能性が推察されます。今後、従事者のリカバリー志向性を高めるために、スティグマ低減につながる要因を明らかにする必要があると考えられました。

以下のリンクより本論文の抄録および全文がご覧いただけます。
Association between previous work experience in general healthcare and recovery orientation among mental health professionals during the COVID-19 pandemic in Japan
https://doi.org/10.1007/s44282-024-00133-w